大きく響いた銃声に、風祭は1つ瞬きをして辺りを見回した。
背後の林から驚いた夜鳥がバサバサと飛び立つ。ようやっと雲から逃れた月を、黒い群れが塗り潰した。
空気を震わせた銃声の余韻は闇に溶け込み、冷たさが僅かばかり増したような気がする。
音源が何処かは判然としない。けれどおそらくは砂浜の方向だ。
左肩に鞄を引っ掛け、右手に持ったボーガンの引鉄を確かめるように数度緩く握って、風祭は軽く唇を噛んだ。
(始まった……)
空の左手に拳を握り、彼は静かに一歩を踏み出す。
ガウン――――ッ
殺し損ねたのか新たな『敵』に出会ったのか、同じ方角から二つ目の銃声。
風祭は音の出所と思われる砂浜の方をちらりと見遣り、そっと眼を伏せた。それ以上しない銃声に、散らされた魂へ黙祷を。
ゆっくりと眼を開き、彼は止めていた足を再び動かす。
目指すは、島の西。
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