あの日から、何日もたっていた。 キルアがクラピカに気持ちを伝えてから。
あれから、キルアは何も言わない。
クラピカも何も言わなかった。
まるで、あの夜が無かったかのように。
( 私を好きだと言ったのは嘘だったのか? )
木々の間から降り注ぐ木漏れ日の中でじゃれ合うキルアとゴンを何となく見つめる。
とくん
目が、離せなくなる。 キルアから。
追ってしまう。 不規則なキルアの行動を。
「 おい 」
「 何だ? レオリオ 」
肩に手をかけられて、クラピカは振り返ってレオリオを見上げた。
「 キルアの方ばっか見て、どうした? 」
「 なんだ、妬いているのか? 」
「 ばっ 」
「 心配するな、私が好きなのはお前だ 」
臆せず言われた言葉にレオリオの顔はカッと紅潮した。
自分を見つめてくるクラピカの瞳。
幾度その瞳が緋くなるのを見たろう。
そのうち自分のために緋くなった瞳を見たのは何度だろう。
今は静かに落ち着いた、けれどうわの空のその眼が見ているのは本当に自分なのか、レオリオは不安になる。
何度唇を重ねても、何度躰を重ねても、クラピカはいつもレオリオを通り越してもっと向こうの、遥か遠い何かを見ている気がした。
そして今クラピカの視線が追うのはキルアだ。
なのにクラピカは自分に好きだという。
レオリオは心の中を乱されて、クラピカの唇を奪った。
クラピカが驚いたように眼を瞠った。
抵抗はしない。 おとなしく下を絡めてくる。
いつも繰り返すその行為は、やはりここ数日ギクシャクしている。
何も感じず、何も想わず、ただされるがままの冷たい口接け。
「 お前は、本当に俺が好きなのか? 」
「 レオリオ? 」
唐突なレオリオの問いに、クラピカは意味を掴みきれずに首を傾げた。
「 お前、俺になんか隠してるだろ! 言え 」
「 ……… 」
「 言え! 」
「 キルアに、
………された 」
「 は? 」
「 っ、キルアに抱かれたっ 」
「 えっ、 お、 う、 お前、 は……? 」
「 私はあいつがきらいだ。
きらい……なのに、きらいなのに。
私は、お前が好きなはずなのに 」
戸惑いと、困惑と、疑念が混じったような複雑な表情で俯いたクラピカに、レオリオは手を伸ばす。
「 さわるなっ 」
再び触れてきた手をクラピカは払った。
何故? 何故私は振り払ったりなど。
答えなどなかった。 答えを導く術もなかった。
ただ、嫌だった。
キルア以外の男に触れられることが。
キルアを好きになることがあるなどとは思わなかった。
いや、これは恋なのか、それすら説明がつかない程の感情で波打つ脈も、零れていく涙も、躰の中心で渦巻く熱いものも何かわからなかった。
けれど、これだけは言えた。
たとえそれが良い意味でも悪い意味でも、自分がキルアに惹かれているのだと。
キルアにずっと探し求めていた何かを求めているのだと。
キルアのことは、好きなのかそれとも嫌いなのか、それはわからなかった。
それでも、キルアを求めてしまう心は偽れるものではなかった。
もう後戻りは許されない。
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