14.つないだ手  






 軽快な音楽が『死』を内包した静寂を引き裂いてあふれ出す。



 大きい岩の影で寄り添いあって夜を明かした不破と杉原は、煩わしそうに閉じていた眼を開けた。





 何の障害もなく開けた空は、こんな血みどろな状況にはお構いなく綺麗に晴れ渡り、視界の隅に引っかかった雲は薄く伸びていた。









『皆、起きてるかしら?』





 大音量の、不快な金属の歪みを伴った声が、鼓膜を震わせる。

 繋いでいた手が僅かに強張って、不破は杉原を酷く愛しいと思った。





『時間制限を設けていないからかしら? 昨夜は三人しか消えなかったわ。皆もっと頑張らないとダメよ?』





 声は確かな笑いを含み。





『細かな時間制限がないとは言え、ゲーム自体のタイムリミットはあるんだから、その時までに終わらなかったら』





 聴きなれた、それでも今までに聴いたことのない冷たさを帯びた声が、哂う。









『でないと、皆死んでしまうわよ?』









 脳が揺さぶられたような気がした。

 それは確かに始まりの時に三上が告げたことではあったけれど、繋いだ手の温もりにその言葉は恐ろしさを増して。



 視線を感じて無感動に見ていた空から、不破は杉原の方に視線を転じる。

 瞳の奥に沈む深い彩を敏感に感じ取って、不破は柔らかな髪に手を伸ばした。露に濡れた髪を梳き、冷えた頬に手を触れれば、杉原の眼がすぅ、と細められる。







『じゃあ、名前を発表するわね。

 天城くん、設楽くん、鳴海くん。

 以上三名が脱落よ』







「不破くん」



 呼ぶ声が、微かに掠れていた。



「僕のこと、好き……?」

「ああ」



 不破は即答した。眼の前で、杉原は嬉しそうに、そして少し哀しそうに笑う。



「杉原?」

「……不破くん、ごめんね?」









『それじゃあ最後に三上くんから預かったメッセージを流すわね』



 ぶつっと引きちぎるように音声が切れる。継いでカタカタとテープの回る音がした。





















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