警 鐘  








『なあ、旅行いかねぇ?』




あの時、唐突なこの科白に隠されていた想いに、気づけていたとしたら。




『大勢でさ』




彼らしからぬこの提案の裏、




『桜上水のやつらも、明星のやつらも、いっそ選抜も呼ぼうぜ。声掛けとけよな、渋沢』




巧妙に隠されていた真実(イタミ)に微かに覚えた不安を、問いただしていたとしたら。




こんなことにはならなかったのだろうか。








分岐点に戻る術はもうない。あるいは、自分たちには最初から選択の余地などなかったのかもしれないけれど。


もし、気づけていたとしても、先延ばしになるだけで、こうなることは運命だったのかも、しれないけれど。






ああ、


それでも、近くて遠い日常に、どうか――――。



















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