家に帰ると、佳一が玄関で待っていた。
「 ただいま 」
「 はる……。 ばか 」
そう言って、佳一は杳の髪に触れた。
「 リュウくんからさっき電話があったんだ 」
杳と別れた直後、琉夜は佳一に連絡をしたのだ。
謝罪するために。
「 あんまり、心配させるな 」
「 ごめんなさい 」
ぎゅっとしがみついて謝ると、佳一の手が優しく背をさすった。
上げた視線の先で、柔らかく佳一が微笑む。
死のうとした自分を、佳一は許してくれないと思っていた。
けれど兄は変わらず優しく見つめてくれる。
「 杳。 かあさんが、心配してたよ 」
「 おかあさんが? 」
訊き返し佳一から離れた杳は、廊下に静かに佇む義母の影にびくりと躰を強ばらせた。
「 おかあ、さん? 」
震える声で呼ぶ。
「 はるくん。 ……心配、したんだから 」
「 おかあさんっ 」
初めて、義母の腕に抱き締められる。
杳の瞳から涙が零れた。
泣いてばかりいるけれど、辛いから無いているわけじゃないのが、何だか不思議な感じだ。
義母はもう一度強く杳を抱き締めると躰を離した。
「 ごめんね、、はるくん。 あたしのせいね 」
責める口調に、杳は緩く首を振った。
「 ううん 」
「 はる。
愛してるわ。 本当はずっと、愛していたわ。
あの人の子供だもの。 あなたはあなただもの 」
「 おかあさん……っ 」
初めて愛されたと思った。
ずっと、そう言って欲しかった。
誰よりも、義母に必要とされたかった。
杳はぎこちなく微笑んだ。
確かだと思った。 もう、苦しまなくてもいい。
だから 。
僕たちはもう少し、生きていてもいいですか。
END
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